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コラム

ICL(眼内コンタクト)・LASIK(レーシック)の違い ― 眼科医が解説する、メリット・デメリットと後悔しない選び方 ―

2025.12.27

Column

視力回復手術を検討されている方の多くが、「LASIK(レーシック)とICL(眼内コンタクト)、どちらが自分に合っているのか」という疑問をお持ちではないでしょうか。

近年、視力回復手術は大きく進歩し、治療の選択肢も広がっています。その中でも、現在主流となっているのが、LASIK(レーシック)とICL(眼内コンタクト)です。
本ページでは、
✔ それぞれの治療法の考え方の違い
✔ ICL(眼内コンタクト)のメリット・デメリット
✔ どのような方に向いているか

を、眼科医の立場から、できるだけわかりやすく解説します。

ICL(眼内コンタクト)とは?

ICL(眼内コンタクト)とは、角膜を削らずに、目の中(虹彩の奥・水晶体の手前)へやわらかい特殊レンズを挿入し、近視・乱視を矯正する視力回復手術です。

日本では2014年に**Hole ICL(KS-AquaPORT)が承認されて以降、安全性と見え方の質が高く評価され、現在ではLASIK(レーシック)を上回る件数が行われる治療法となっています。

一方で、
「ICLは目の中にレンズを入れるけれど、危険ではないの?」
「LASIK(レーシック)と比べて本当にメリットがあるの?」
といった不安や疑問を感じる方も少なくありません。そのため、まずは治療の仕組みの違いを理解することが大切です。

術式の考え方の違い ―LASIK(レーシック)とICL(眼内コンタクト)―

LASIK(レーシック)の考え方

LASIK(レーシック)は、角膜の表面をレーザーで削り、角膜のカーブを平らにすることで近視や乱視を矯正する治療法です。角膜の形そのものを変えるため、

矯正量が大きいほど角膜への影響が大きくなりやすい
角膜が薄い方では適応が限られる

といった特徴があります。

ICL(眼内コンタクト)の考え方

一方、ICL(眼内コンタクト)は、目の中にレンズを入れてピントを調整する方法です。角膜を削らず、目の形を変えずに視力を矯正できることが大きな特徴です。

そのため、強い近視でも角膜への負担が増えにくい、角膜の状態に左右されにくいといった利点があります。

ICL(眼内コンタクト)のメリット

① 角膜を削らないため、目への負担が少ない

ICLは、LASIK(レーシック)のように角膜を削る治療ではありません。
そのため、
*角膜の強度や形を保ちやすい
*角膜神経への影響が少なく、術後のドライアイ症状が出にくい傾向
*見え方だけでなく、目の快適さを保ちやすい
といったメリットが期待できます。

角膜が薄い方や、ドライアイが強く角膜手術に不安がある方でも、精密検査の結果によってはICLが適応となる場合があります。

② 見え方の質が高い(コントラスト・夜間視機能)
LASIK(レーシック)では、角膜形状の変化により高次収差が増え、夜間のハロー・グレアやコントラスト低下が問題になることがあります。この傾向は、近視が強いほど出やすいとされています。

一方、ICL(眼内コンタクト)は眼球の形を変えないため、
*コントラスト感度が良好
*夜間のにじみやまぶしさが比較的少ない
といった視機能の質の高さが特徴です。
「視力の数字だけでなく、くっきり自然に見えること」を重視される方に選ばれています。

③ 強度近視・乱視にも高い矯正精度
ICL(眼内コンタクト)は、強い近視や乱視にも安定した視力矯正が可能な治療です。レンズの度数を細かく調整できるため、強度近視でも高い精度で矯正が行えます。
また、乱視用(トーリックICL)を使用することで、近視と乱視を同時に矯正することが可能です。

そのため、ICLは次のような方に選ばれています。
*−6D以上の強度近視の方
*乱視が強く、眼鏡やコンタクトでも見えにくさを感じる方
*角膜が薄く、レーシックが不向きと判断された方

④ 強度近視では「近視の戻り」が起こりにくい
LASIK(レーシック)などの角膜を削る手術では、術後に近視が少し戻る(リグレッション)ことがあります。

これは、時間の経過とともに角膜の屈折力が再び強くなることが一因とされています。

報告では、矯正量が大きいほど。角膜形状変化が大きいほど近視の戻りが起こりやすく、長期的には10年間で矯正量の約10%程度が戻るとされています。

ICL(眼内コンタクト)は角膜の形を変えないため、角膜変化による近視の戻りが起こりにくいです。

⑤ 可逆性がある(取り外し・交換が可能)
ICLは、取り外しや交換が可能な治療です。将来、
*白内障治療が必要になった場合
*視力や目の状態が変化した場合
には、レンズを取り出し、手術前の状態(近視の状態)に戻すことができます。
また、
*度数が変化した場合
*老眼への対応を考えたい場合
*より高性能なレンズが登場した場合
には、レンズの交換も技術的に可能です。
これは、角膜を削って元に戻せない治療にはないICL(眼内コンタクト)ならではの安心材料です。

⑥ 将来の白内障手術に影響が少ない
LASIK(レーシック)後の目では、角膜形状の変化により、将来の白内障手術時にレンズ度数計算が難しくなることがあります。ICL(眼内コンタクト)は角膜を変えないため、白内障手術時の度数計算誤差が起こりにくいため、多焦点眼内レンズなどの選択肢も検討しやすいといった利点があります。

今だけでなく、将来の眼科治療まで見据えた安心感もICL(眼内コンタクト)の特徴です。

ICL(眼内コンタクト)のデメリット・注意点

① 内眼手術であることによるリスク
ICL(眼内コンタクト)は、目の中にレンズを挿入する内眼手術です。角膜を削るLASIK(レーシック)とは異なり、目の内部を扱う治療であるため、特有の注意点があります。

発生頻度は非常に低いものの、

*感染や炎症
*術後の眼圧上昇
*角膜内皮細胞への影響

といったリスクがゼロではありません。

そのため、
手術前の精密検査と、術後の定期的なフォローアップが非常に重要となります。

② 適応条件があり、誰でも受けられるわけではない

ICL(眼内コンタクト)は安全性を最優先に考える治療であり、すべての方が受けられるわけではありません。

以下のような場合には、安全性の観点から適応外となることがあります。
*前房(目の中のスペース)が十分でない方
*角膜内皮細胞数が少ない方
*進行性の近視がある方
*その他の眼疾患をお持ちの方

このようなケースでは、LASIK(レーシック)など、他の治療法の方が適している場合もあります。

③ 費用が比較的高額

ICL(眼内コンタクト)は自由診療となるため、LASIK(レーシック)と比べると費用は高めになります。

ただし、
*見え方の質の高さ
*長期的な視力の安定性
*将来の白内障や老眼への対応のしやすさ

といった点まで含めて考え、長期的な価値を重視して選ばれる方が多い治療でもあります。

迷っている方は、まずカウンセリングから

ICL(眼内コンタクト)やLASIK(レーシック)に興味はあるものの、「本当に自分に合うのか」「リスクは大丈夫か」と迷われる方は少なくありません。

そのような場合は、まず多くのクリニックや医院で無料や低額のカウンセリングをご利用ください。

実際に医師と直接話すことで、目の状態に合った治療法を冷静に判断しやすくなります。

カウンセリングを受けたからといって、必ず手術を受けなければならないわけではありません。

納得できる選択をするために、まずは情報を整理するところから始めていただければと思います。